では、震災2年目、福島の「心の復興」の方に移ります。
震災1年の勉強会で私が感動した2人の発言のうち、1つを紹介します。
発言された方に了解をいただいたので、掲載させていただきます。

福島市のある女性の発言です。

不安なお母さんに、どうやって寄り添っていくのか。ただ、専門的、科学的な知識を言葉とか数字で示しただけでは、お母さんたちは納得できない。理解しても納得はできないので、難しいです。
かえって、学術的なことではなくて、ふだん、生活の中で、仲のいい友達、信頼関係が築けている相手が「私は安心だと思っている。大丈夫だと思っている」ということが、すごく大きいと思います。もう全然わけわかんなくて、不安なんだけど、「あなたが大丈夫っていうんだったら、私、大丈夫だって信じるから」って、私も何人かの人に言われました。

私は別に専門家ではないので、そんなにデータを示すわけでも何でもなく、自分で情報を拾って、私の中では納得して、「大丈夫、ここにいるよ」と生きています。そして、「じゃあ、あなたがいるなら大丈夫」と言われたことがあります。

今、出てきている問題っていうのは、全部、もとからあった問題が表面化した、心の問題です。周りの人と信頼関係が築けていたのかっていうことです。もとからなかった信頼関係をもう一度築き上げるのか、崩れてしまったものを築き上げるのかわかりませんけれども。

ですから、それをすぐに解決するような魔法の言葉もありません

だれでも、あるところで、あきらめるというか、もう、「自分で立ちあがるしかない」っていう作業が必要だと思います。「だれかに引き上げてもらおう」っていうのではなく、「自分で立ちあがろう」っていうふうに思える人を、どうやって増やすか。

ということであれば、やっぱり、背中を見せるしかないと私は思っています。 私が納得して、「元気に過ごしていますよ」っていう発信を、一人でも多くの人にするしかない。私たちみたいに一般の人が、ということです。専門家の方々とは別に。一般のお母さんとしての私が、ということです。





「背中を見せるしかない、と思っています。」、彼女の口ぶりは今も思いだせます。しびれました。

私はこのリスク・コミュニケーションの勉強会で、宇野先生から「魔法の言葉」を聞きたくてやってきた。でも、私が宇野先生から得たのは、その明解な知識はもちろんですが、福島に寄せる思いの深さと行動力、具体的提案力です。
これは、のちの「リスク・コミュニケーションの課題」で別記しますが、私のような素人は、言葉や文章だけでなく、それを発する方の生き方に動かされるのではないかと思いました。それについては賛否ありましょうが。

以前にも書きました。成功する確率は90%の手術、でも、自分は失敗の10%に当たるかもしれない、というより、自分が死ぬか生きるかは、2分の1でどっちかになる。けれど、どうして手術台に上がるかといったら、医師を信頼するからだ、という話。

安心と信頼は不可分。

だとしたら、不安な母親に寄り添えるのは、だれなんでしょう。自分の信頼する配偶者、家族、身近な人、ママ友ですよね。いくら、わかりやすく専門家が説明したところで、「自分の研究のためじゃないの」「どうせ人ごとと思っているんじゃないの」と、すでに疑心暗鬼に陥っている人には、何も入らないかもしれません。

私も、夫の言うことは頭から信じます。あと、ブログ交流をしていて絶対的に尊敬している人、また、ネットで見て絶対的にこの専門家はたしかだと思う人、そういう人の言うことは全部信じます。(だから、菅谷市長の手のひら返しは非常に衝撃だったのです)

道尾秀介氏のコメント()を過去に紹介しましたが、専門家は科学のプロですが、私らは科学の素人だけど、育児とかママ友づきあいのプロです。その属性の中で、信頼関係を築けた人に「私は元気で生きているよ」「福島でやっていけるんだよ」ということを背中で見せていくことはできるのではないでしょうか。
だれかの気持ちをかえてやる、とかではなくて。

それから、不安のただなかにいる人も、だれかに引っ張り上げてもらう、助けてもらうではなく、自分で立ち上がるすべを探してほしいなと思います。




道尾氏のコメント、1年前のものですが再掲。

静岡新聞夕刊(2011.4.1)
道尾秀介 
プロの人間として 「力」結集、改善へ

この混乱の中、一刻も早く状況を回復するヒントになるのはプロフェッショナルリズムなのではないかと思っている。なにも仕事についてだけではない。ある程度の年齢以上の人々は、みんな何かのプロフェッショナルであるはずだ。

プロの男性、
プロの女性、
プロのお金持ち、
プロの体育会系、
プロの父親、
プロの母親、
そして何よりプロの人間であるはずだ。

それをみんなが自覚さえしていれば、怒鳴り声も無銭飲食も消えてなくなる。電力の無駄遣いも、懸命に動いてくれている機関への悪態も、きっとなくなる。そして被災地には、さまざまな「力」が集まり、状況の改善に役立ってくれる。
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