斗ケ沢秀俊さん(毎日)ありがとうございます。全文貼ります。
http://mainichi.jp/opinion/news/20120608k0000m070113000c.html
東京電力福島第1原発事故から1年3カ月。今なお福島県内だけでなく首都圏でも放射線、放射性物質による健康影響、特に内部被ばくを心配する人が少なくない。しかし、さまざまな調査により内部被ばくは健康に影響を及ぼすレベルよりも十分に低いことが分かってきた。不安を抱いている人は、まずこれらのデータに目を向けてほしい。

 「福島県から避難すべきですか」「料理に水道水を使うと危険ですか」「今年の夏は子どもを半そで、短パンで登校させても大丈夫ですか」

 福島県郡山市の佐藤塾副塾長、佐藤順一さんはこの1年間で約10回、県内で「放射能について学ぼう」と題した講演をした。今年4月の講演前に集めた質問用紙にはこうした質問が並んでいた。住民の根強い不安を物語っている。

 立教大大学院理学修士で放射線に詳しい佐藤さんは事故後、生徒や保護者から「ここに住んでいてよいのか」などと聞かれ、自分で資料を作成して説明した。講演では外部被ばくと内部被ばく、被ばく量の基準、旧ソ連・チェルノブイリ原発事故との比較などについて、イラストや表のスライドを見せながら話す。結論は「普通に暮らしていて害が出ることはありません」。講演後は「話を聞いて安心しました」「郡山市に住んでいる先生の話なので心に響きました」などの感想が寄せられた。佐藤さんは「メディアでは危険をあおる情報が多く出ているため今も不安を抱いている人が多い」と語る。

◇着実な低下 調査で分かる

 福島県民の被ばく状況はかなり分かってきた。食べ物などを通じて体内に取り込む放射性物質による内部被ばくについては、体内の放射性物質の量を測るホールボディーカウンター(WBC)検査と、食事調査が実施されてきた。

 昨年9月まで市内の一部が緊急時避難準備区域に指定されていた同県南相馬市にある同市立総合病院によると、昨年9月から今年3月までにWBC検査を受けた9502人中、検出限界以下が6668人、原発事故で放出された放射性物質のセシウム137が体重1キロあたり20ベクレル以上あったのは182人だった。1月以降に測定を受けた中学生以下の子どもの99%は検出限界以下で内部被ばく量が着実に低下していることを示した

 同県は3月までに県内で実施されたWBC検査(受診者計3万1622人)をもとに生涯の内部被ばく量を推計したところ、26人以外は1ミリシーベルト以下だった。厚生労働省は内部被ばくを年間1ミリシーベルト以下に抑えることを目標にしている。

 福島市の生活協同組合「コープふくしま」は、食事を1食分多く作り、それを検査する「陰膳」方式による放射性物質測定をした。100家庭中、食事1キロあたり1ベクレル以上のセシウムが検出されたのは10家庭。最多でも11.7ベクレルで、自然界に存在して日常的に摂取している放射性カリウムの含有量(1キロあたり15~58ベクレル)の4分の1程度だった。

 1957年生まれの私やその前後の年齢の人は、大気圏内核実験で発生した放射性物質による被ばくをしている。放射線医学総合研究所の研究者などの調査によると、ピーク時の60年代前半には、成人の体内には数百ベクレルのセシウム137があり、1日4ベクレルほどのセシウムを摂取していた。福島県民の平均被ばく量は子ども時代の私よりも少ないのだ。このレベルの被ばくで健康影響があるとしたら、日本ではがん死が増えているはずだが、年齢調整死亡率は増えていない。

◇原発の問題と区別し判断を

 東京大大学院理学系研究科の早野龍五教授は「測って結果を公表することが重要」との考えから、昨年9月に「給食まるごとミキサー検査」を提案した。各地でこれが採用され、今年度からは福島県内の全市町村が検査している。南相馬市のWBC検査にも協力している早野さんは測定結果について「内部被ばくが検出されるのは昨年3月に吸入した方が大半で、被ばく量は順調に減っている。現在、食事や吸入により内部被ばくしている人は少ない。調査結果を総合すると、チェルノブイリ周辺地域に比べて、内部被ばく量ははるかに少なく、健康リスクは小さい。測定で比較的高かった人の被ばく量を下げる個別対策が今後の課題となる」と指摘する。

 原発反対を訴えるために、被ばくの健康影響を過大に言う人が少なくない。私は本欄などで脱原発と核燃料サイクル反対を主張してきた。原発への態度と放射線影響の評価は分けて考えなければならない。データから判断すると、健康影響が出るレベルの被ばく量ではないことは明らかだと私は考える。
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